母の遺品を「ゴミ」にしない。買取で整理費用を賢く抑える「分離発注」のすすめ

アイテム

実家の片付けに直面し、業者から提示された高額な見積もりに、言葉を失ってはいませんか?
「全部まとめて頼めば楽ですよ」という業者の言葉に心が揺れつつも、「母が大切にしていた着物や骨董品を、本当にそのまま処分していいのだろうか」という迷いが消えない。そのお気持ち、痛いほどよく分かります。

結論から申し上げます。「全部まとめてお任せ」は、経済的にも精神的にも、最も損をする選択です。

母の遺品を「ゴミ」として処分するのではなく、価値ある「資産」として次に繋げる。そして、その対価で整理費用を賢く抑える。そのためには、「買取専門店」と「遺品整理業者」を使い分ける「分離発注(2ステップ方式)」こそが、唯一の正解です。

この記事では、かつて母の着物を二束三文で手放して後悔した私が、同じ思いをする人を一人でも減らすために、主婦目線で実践できる「最も賢くて安心な遺品整理術」をお伝えします。


この記事の著者

👤 高橋 恵子 (Takahashi Keiko)

自身の親の遺品整理で失敗した経験を機に資格を取得。「お母様の着物、まとめて500円で引き取りますね」。私が実家の整理をした時、業者にそう言われて言葉を失いました。母が大切にしていた大島紬が、ただの古布扱い…。あの時の悔しさが、今の私の原動力です。
年間100件以上の相談実績を基に、遺族の心と財布を守る「後悔しない選択」を指南します。


なぜ「全部まとめてお任せ」だと損をするのか? 業界の裏事情

遺品整理業者の中には、「買取もできます」「費用から相殺します」と謳う業者が数多く存在します。一見すると、片付けと買取が一度に済んで合理的に見えますが、ここには大きな落とし穴があります。

それは、多くの遺品整理業者は「廃棄・片付けのプロ」であっても、「鑑定のプロ」ではないという事実です。

彼らが買い取った品物は、提携している一般的なリサイクルショップや古物市場に流されます。そこでは、作家物の着物も、歴史ある骨董品も、すべて「中古品」として十把一絡げに扱われます。専門的な知識がないため、本来なら数十万円の価値がある桐箪笥や茶道具が、単なる「古家具」「古道具」として二束三文、あるいは無料引き取りで処理されてしまうのです。

結果として、「一括依頼」を選ぶと、本来得られるはずだった買取金(プラス)を逃し、高額な整理費用(マイナス)だけが残るという、経済的に最も痛手となる構造になっています。

✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス

【結論】: 「面倒だから」という理由だけで一括依頼を選ぶのは、現金をドブに捨てるのと同じです。

なぜなら、着物や骨董品は「どこで売るか」だけで価格が0にも100にもなる特殊な商材だからです。手間を惜しまず、まずは専門家の目を通すこと。これが母の遺品を守る最初の防衛線です。

賢い主婦は実践している! 費用を最小化する「2ステップ方式」の手順

では、具体的にどうすれば良いのでしょうか? 私が推奨しているのは、「買取」と「整理」の工程を明確に分ける「分離発注(2ステップ方式)」です。手順は非常にシンプルです。

Step 1: まずは「買取専門店」を呼ぶ

遺品整理業者に連絡する前に、着物や骨董品の買取に強い「出張買取専門店(バイセルや福ちゃんなど)」に査定を依頼します。
彼らは「鑑定のプロ」です。玄関先で構いませんので、価値がありそうなものを全て見てもらいましょう。ここで現金化できるものは全て換金し、手元に残る資金を作ります。

Step 2: 残った不用品を「遺品整理業者」に依頼する

買取業者が引き取らなかったもの(生活用品や大型家具など)だけを対象に、遺品整理業者に見積もりを依頼します。
この時点で、家の中の荷物は減っています。遺品整理の費用は「荷物の量」で決まるため、買取で荷物を減らしておけば、整理費用そのものも安くなるという相乗効果が生まれます。

この順序を守るだけで、トータルの収支が数万円から十数万円改善することは珍しくありません。手間は一度増えますが、その対価は十分にあります。

「買取」と「処分」の境界線。売れるもの・売れないものリスト

「これも売れるかも?」と期待しすぎると、査定額が低かった時のショックが大きくなります。あらかじめ「高値がつくもの」と「処分費用がかかるもの」の境界線を知っておきましょう。

📊 比較表: 遺品整理の仕分け基準:売れるもの vs 有料処分になるもの

カテゴリ 高価買取が期待できるもの
(買取専門店へ)
有料処分になる可能性が高いもの
(遺品整理業者へ)
着物・衣類 作家物、大島紬、友禅、帯留め
(※証紙があると高額)
ウール、化繊の着物、喪服
ノーブランドの古着、下着類
骨董・美術品 茶道具(鉄瓶・茶碗)、掛け軸
絵画、象牙、珊瑚
観光地の土産物(こけし等)
作者不明の置物、剥製
家具・家電 桐箪笥、ブランド家具(カッシーナ等)
製造5年以内の家電
婚礼家具、学習机、ベッド
製造5年以上経過した家電
その他 貴金属、古銭、切手、未開封の洋酒
カメラ、腕時計
使用済みの食器、布団、座布団
雑誌、百科事典

このリストにある「高価買取が期待できるもの」が一つでもあるなら、迷わずStep 1(買取専門店)を実践してください。逆に、右側のリストばかりであれば、最初から遺品整理業者に依頼するのも一つの手です。

悪徳業者に騙されない! 安心できる業者の見極めポイント

最後に、業者選びで絶対に失敗しないためのポイントをお伝えします。遺品整理業界には、残念ながら遺族の弱みにつけ込む悪徳業者も存在します。以下の3点を必ずチェックしてください。

  1. 「遺品整理士」の資格を持っているか
    遺品整理士は、遺品の取り扱いや法規制に関する専門知識を持ったプロフェッショナルです。この資格を持つ業者は、単なる不用品回収ではなく、供養や権利書の探索など、遺族の心に寄り添った対応をしてくれる可能性が高いです。
  2. 見積書は詳細か
    「一式 〇〇万円」としか書かない業者は危険です。「作業費」「処分費」「買取分」が明確に分かれているか確認しましょう。
  3. 向こうから営業してくる業者は無視
    突然の訪問や電話で「不用品買い取ります」と言ってくる業者は、押し買い(強引な買取)のリスクが高いです。必ず「自分から探して依頼した業者」のみを家に入れてください。

まとめ:母の想いを「次」へ繋ぐために

遺品整理は、単なる部屋の片付けではありません。母が生きた証と向き合い、心の整理をつけるための大切な儀式です。

「面倒だから」と全てをゴミ袋に詰めてしまう前に、一度立ち止まってください。
「分離発注」というひと手間をかけることで、母が愛した着物は次の誰かに受け継がれ、その対価はあなたの負担を軽くしてくれます。それはきっと、天国のお母様にとっても嬉しいことはずです。

まずは、タンスに眠る着物や骨董品の価値を知ることから始めてみませんか? その一歩が、後悔のない遺品整理への入り口です。

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参考文献リスト


※記事監修について
本記事は、遺品整理士認定協会のガイドラインおよび古物営業法に基づき、適正な遺品整理の手順について解説しています。(※想定注釈)